世界遺産には絶滅危惧種も登録されています。
国家という概念のない生態系を保護管理するために、国家間が国際協力をしている事例を紹介します。
この論文は世界遺産検定マイスターの問3と同じ構成で作成しておりますが、合格を保証するものではありません。検定での事例の取り扱いは個人の責任となりますのでご理解ください。
また、本論文の転用や写しはご遠慮ください。
【出題】国境を越えて世界遺産を保護する場合の管理のあり方
【オリジナル問題】
世界自然遺産の生態系は、必ずしも一つの国家や世界遺産の登録範囲内で完結するものではない。河川や森林、生態系、野生動物などは国境を越えて存在しており、それぞれの国家が異なる制度や政策のもとで保護管理を行うことが、世界遺産の価値に影響を与える場合がある。
国境を越えて広がる自然環境や生態系を保全するうえで、国家間にはどのような協力が求められるか。具体的な世界遺産の事例を挙げ、その課題と取り組みを説明したうえで、今後必要となる保護管理のあり方について、あなたの考えを述べなさい。
【論文】生態系にあわせて国境を越えて保護管理を行う
世界自然遺産の保全では、登録範囲や国境ではなく、生態系全体を一つの単位として管理する視点が必要である。河川や森林、野生動物の行動圏は複数の国家にまたがるため、一国が厳格に保護しても、隣国で森林伐採や開発、密猟が進めば、世界遺産の顕著な普遍的価値(以下、OUV)は損なわれる。したがって国家間には、科学的データの共有に加え、共通の目標と責任を定めた継続的な共同管理が求められる。
その事例が、ブラジルとアルゼンチンにそれぞれ登録されている「イグアス国立公園」である。両地域には大西洋岸森林が残り、広い行動圏を必要とするジャガーなど、多様な生物が生息している。ジャガーは国境と無関係に移動するため、それぞれの国が公園内を管理するだけでは個体群の実態を把握できない。そこで両国は、カメラトラップなどによる調査を連携して行い、個体ごとに異なるロゼット模様から個体を識別し、国境を越えて生息するジャガーを一つの個体群として捉えている。これは行政上の境界ではなく、生態系のつながりや野生動物の行動範囲に基づいて自然を管理する取り組みである。
一方、越境保全には、国家ごとに法律、土地利用、予算、人材が異なるという課題がある。さらに、ジャガーの移動経路が世界遺産の外側に及ぶ場合、農地や牧場、道路開発によって森林が分断されるおそれもある。私は、両国の国立公園管理機関による常設の共同委員会を設け、共通の調査方法、保全目標、役割分担を定めた越境管理計画を策定すべきだと考える。調査データから重要な生態回廊を特定し、登録範囲外を含めて森林の連続性を確保するとともに、密猟対策やレンジャー育成も共同で進める必要がある。また、家畜被害による住民との軋轢を抑えるため、補償や環境教育を整え、地域住民を保全の担い手として参加させることも重要である。さらに言えば、両国が財源を分担し、ユネスコやIUCNなど第三者機関の助言も受けながら、個体数や森林面積の変化を定期的に評価し、対策を見直す順応的管理が必要である。
イグアスの事例は、世界自然遺産を一国だけで守ることの限界を示している。今後は、情報交換にとどまらず、両国が共通の科学的根拠に基づいて意思決定し、その成果を定期的に検証する仕組みが必要である。担当者や政権が交代しても協力を継続できる制度を築き、世界遺産の外側を含む生態系全体を守らなければならない。世界遺産を守るために国家が協力するのではなく、一つにつながった自然を守るために、国家の側が境界を越える。この考え方こそ、越境する世界自然遺産の保護管理が目指すべき方向である。(だいたい1090文字)
【まとめ】イグアスの取り組みは日本の熊対策に活用できるか?
イグアスのジャガー保全の考え方は、日本の熊対策にも活用できると考えています。
踊り子ちゃん熊被害のニュース多いよね♪
でも、熊には国境は関係ない現実。
現在の日本では、熊の市街地への出没や人身被害が問題となっていますが、出没した個体への対応だけでなく、「どの個体が、どこから、どの経路で移動してきたのか」を把握することが重要だともいえます。
例えば北海道では、すでにカメラトラップの画像とAIを活用したヒグマの個体識別技術が検証されています。
最新技術をGPSや生息環境のデータと組み合わせて使用し、熊の移動経路や出没しやすい場所を予測すれば、今後は重点的な監視や住民への早期警戒につなげられるからです。
イグアスから学ぶべきなのは、野生動物を単に「捕獲する対象」とするのではなく、科学的データから行動を把握し、人間側の土地利用や対策を改善する視点にあります。
そもそもジャガーをはじめとした生物は人間よりも長い間、地球で過ごしてきているのです。あとから住み始めた人間だけの都合で、動物と人間の生活圏を勝手に切り離すのは難しくて当たり前。
いずれにしても、イグアスの事例は、世界遺産を適切に管理するうえでも有効な考え方だと考えています。
その他の論文は、 #マイスターnote にまとめてありますのでご覧ください。
論文はそのまま使うのではなく事例の参考や書き方の例としてご活用ください。







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