川から水を引いて田畑へ届ける。
言葉にすると簡単ですが、川を流れてくるのは水だけではありません。
砂や小石などの土砂も一緒に運ばれてきます。雨が増えれば水量も変わり農地に必要な水を取り入れるはずが、多すぎる水を招き入れることにもなりかねません。
クレオさん水は欲しいけど、土砂や増水にはどう対応するんだ?
今回の記事では、今から2200年前に余分な水や土砂を逃がしながら農地へ水を導く仕組みに向き合った中国・四川省の都江堰(とこうえん)を読んでいきます。
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【中国の世界遺産】青城山と都江堰(とこうえん)水利施設とは?
都江堰は、成都平原の西側、山地から平野へ出てくる岷江の水を利用する施設です。紀元前3世紀に始まり、その後も改修や拡張を重ねながら、地域の灌漑を支えてきました。
正式名:青城山と都江堰(とこうえん)水利施設
保有国:中国
登録年:2000年
登録基準:ⅱ、ⅳ、ⅵ
その他:ダムを造らず、川を分ける。2000年以上受け継がれてきた「水を操る」知恵。
青城山は道教の歴史に関わる山で、都江堰は水を利用する技術を伝えています。今回は、このうち水利施設の仕組みに焦点を当てます。
| 主な水利施設 | 役割 | 簡単に言うと |
|---|---|---|
| 魚嘴(ぎょし) | 岷江の流れを内江と外江に分ける | 分ける |
| 飛沙堰(ひさえん) | 余分な水や土砂を外へ逃がす | 逃がす |
| 宝瓶口(ほうへいこう) | 必要な水を成都平原へ導く | 取り入れる |
都江堰のすごさは、単に川から水を引いたことではありません。
川には水だけでなく土砂も流れ、増水すれば必要以上の水が押し寄せます。そこで「分ける・逃がす・取り入れる」という三つの役割を組み合わせ、水量と土砂を調整しながら成都平原へ水を届けました。
この連携こそが、都江堰の水管理の大きな特徴です。
魚嘴(ぎょし):川の流れを二つに分ける
最初に注目したいのが、魚の口に似た先端を持つ分水堤「魚嘴」です。
川の中に設けられたこの施設が、岷江(びんこう)の流れを内江と外江に分けます。
内江は主に成都平原へ水を導く側、外江は川の流れや洪水を下流へ逃がす側として働いてきました。
ただし、魚嘴が蛇口のように、一定量の水をいつも同じ割合で振り分けるわけではありません。内江と外江の幅や深さ、川の水位などの条件によって、水の分かれ方が変わります。
都江堰を理解するときには、構造物だけでなく、その周囲の川の形にも目を向ける必要があります。


写真:星星(Qiu Xingxiang)/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0(加工なし)
飛沙堰(ひさえん):余分な水と土砂の逃げ道
内江へ水を導いたあとにも調整する仕組みが必要です。そこで重要になるのが「飛沙堰」です。
飛沙堰は、内江側の余分な水を外江側へ逃がす、低い越流堰として働きます。水位が高くなると、その上を水が越えて流れます。
同時に、川の湾曲などによって生まれる流れを利用し、内江へ入ってきた土砂を外へ排出する役割もあります。
ここでいう土砂の排出は、網やフィルターで砂を取り除く方法とは違います。水と土砂の動きに働きかけ、流れていく方向を変える仕組みです。
もちろん、すべての土砂が完全になくなるという意味ではありません。飲料水をつくる浄水処理とも別の話です。
農地へ続く水路に土砂をためすぎないために、途中に逃げ道を設ける。水を利用するには、入れる工夫と同じくらい、外へ出す工夫も重要だったのです。
宝瓶口(ほうへいこう):平原へ導く水の入口
三つ目の「宝瓶口」は、岩山を切り開いてつくられた、内江の水を成都平原へ導く狭い通水口です。
水が通れる幅や高さには限りがあるため、この入口の形が、下流へ送り込む水量に関わります。増水時に入りきらない水を飛沙堰側へ逃がす働きと、組み合わせて見ることが大切です。
魚嘴で流れを分け、飛沙堰で余分な水や土砂を逃がし、宝瓶口から平原へ水を導く。
この順番は、働きを理解するための整理です。実際には、三つの施設が水位や流れを通じて影響し合っています。どれか一つだけで、取水や洪水への対応が完結しているわけではありません。
宝瓶口を抜けた水は、その先の水路網へとつながります。目の前の取水施設が、遠くの農地の水事情に関わっているんですね。
水インフラの現場から見る土砂と手入れの重要性
僕はダムや水門に関わる電気工事に携わってきました。都江堰を調べていて、特に気になったのが土砂への対応です。
現場でも、土砂の堆積が水位計の測定に影響することがあります。
水位を測りたいのに、その川底にたまった土砂が問題になる。水を扱う設備では、水だけを見ていればよいわけではないんですよね。
都江堰も、水路に土砂がたまれば流れ方が変わります。自然の地形や水の動きを生かす仕組みだからこそ、その働きを保つための手入れが必要です。「歳修(さいしゅう)」と呼ばれる定期的な修繕も続けられてきました。
修理や土砂の除去をする間も、下流には水を必要とする人がいます。僕は設備に関わってきた立場から、いつ水を止め、どう作業を進めてきたのかも気になります。
都江堰を考えるときには、3つの施設の関係とあわせて古代の人々の仕事にも注目したいです。
まとめ:水を使うためには土砂と増水にも向き合う



なんやかんや
水が来た!
都江堰は川から水を引くだけの施設ではありません。流れを分け、余分な水や土砂を逃がしながら、平原へ水を届ける仕組みです。
その働きは、3つの主要施設と川の形、さらに修繕を続ける人々の仕事によって支えられてきました。
旅先で川が分流しているたびに都江堰を思い出しそうです笑





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