おにぎりの包みも、空になったペットボトルも、山では誰かが運ばなければ残り続けます。
富士山では、登山者が自分のごみを持ち帰ることが基本です。一方、キリマンジャロでは、ガイドや荷物を運ぶポーターも、ごみを山から下ろす仕組みを支えています。
クレオさんどちらもゴミ問題は改善している
ただし、「ごみが減った」という数字だけでは見えてこないことがあります。誰が運び、どんな工夫が効いたのか。
今回の記事では二つの山を比べてみます。
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【世界遺産の山】ごみの持ち帰り方は違い
富士山は信仰と芸術の対象としての価値を認められた文化遺産。タンザニアのキリマンジャロは、壮大な火山の景観などが評価された自然遺産です。
登録理由は違っても、多くの登山者を迎える山として、ごみを残さない工夫が欠かせません。
| 比較する点 | 富士山 | キリマンジャロ |
|---|---|---|
| 持ち帰りの基本 | 登山者が自分のごみを持ち帰る | 登山ツアーの運営に、ごみの搬出を組み込む |
| 仕組みを支える人 | 登山者、山小屋、行政、清掃団体など | 登山者、ガイド、ポーター、公園管理者など |
| 改善を見る手がかり | 登山者がごみを見かけた割合 | 過去の回収率の研究や、清掃活動の報告 |
登山者の心がけに加え、持ち帰りを実行できる仕組みがあるかどうかが、両方の山で重要になります。
【富士山】ごみを見かける人が減少
富士山の来訪者管理に関する調査では、「登山道や山頂付近でごみをよく見かけた」と答えた登山者の割合が、次のように下がっています。
| 調査年 | ごみを「よく見かけた」割合 |
|---|---|
| 2023年 | 29.0% |
| 2024年 | 20.4% |
| 2025年 | 11.3% |
※日本人の成人登山者を対象としたアンケート。2025年の当該設問は841人が回答。ごみの重量を測った数字ではなく、回答者や当日の状況にも左右されます。
この結果は、登山者の目に入るごみの状況が改善していることを示します。



ゴミそのものが6割減ったわけではないぞ
なぜ改善?清掃と持ち帰りの習慣
富士山の清掃活動は、世界遺産登録よりずっと前から続いています。
環境省によると、登山者の増加を背景に1979年ごろから清掃が行われ、行政や民間団体などの継続的な活動によって、山岳部のごみは減ってきました。
現在の公式登山案内でも、登山道や山小屋にはごみ箱がなく、すべて持ち帰るよう案内されています。出発前に余分な包装を外すことも勧められています。
落ちているごみを拾うだけでなく、持ち込む量を減らし、残さず持ち帰る。そうした積み重ねが、清掃後のきれいな状態を支えます。
近年のマナー周知や来訪者管理も改善に関わった可能性があります。ただし、アンケートだけで「入山料の導入が効いた」など、一つの施策の効果を切り分けることはできません。
トイレの改善で山の環境も変化?
山の環境問題には、包装や空き缶とは別に、し尿の処理もあります。
富士山では2006年度までに、民間の山小屋42軒すべてで環境配慮型トイレの整備が完了しました。
ただし、使い続けるには維持管理が必要です。利用者が現地の案内に従い、処理できないものを便器に入れないことも、改善を支える行動です。
キリマンジャロでは、持ち帰りを登山の仕事に組み込んだ
キリマンジャロでは、「持ち込んだごみを持ち帰る」という考え方を、登山ツアーの運営に取り入れてきました。
「Trash-in, Trash-out」、略してTITOと呼ばれる仕組みです。
研究では、2003年から2006年にかけて、ごみの発生量が増える一方、回収率は改善したと報告されています。
| 研究で示された項目 | 2003年 | 2006年 |
|---|---|---|
| 年間のごみ発生量〈推計〉 | 約87トン | 約125トン |
| ごみの回収率 | 64% | 94% |
※過去の研究結果であり、現在の回収率を示すものではありません。富士山のアンケートとは測り方が異なるため、数字の大小で清潔さを比較することもできません。
ここで注目したいのは、ごみが増えても、回収の仕組みを改善できたことです。研究は、その改善をTITOの導入と結び付けています。
バーゼル条約事務局の資料では、公園のレンジャーが登山グループのごみを計量する取り組みも紹介されています。
持ち帰りを呼びかけるだけでなく、実行できたかを確認する点が特徴です。
では、その後はごみ問題がなくなったのでしょうか。
2025年11月には、旅行会社Zara Tanzania Adventuresがキリマンジャロの清掃で600キロを超えるごみを回収したと報告しています。ペットボトル、食品包装、古い衣類や登山用品などが含まれ、現地紙もこの活動を報じました。
これは主催者による一回の活動報告です。山全体の年間ごみ量や、前年からの増減は分かりません。それでも、持ち帰りの仕組みがあってなお、清掃が必要な状況は読み取れます。
山を支える人にも目を向けたい
キリマンジャロでは、ポーターが登山者の荷物や食料だけでなく、ごみの搬出も支えています。一方、過去の研究では、ポーターへの過大な荷重も課題として指摘されました。
山がきれいになっても、そのために運ぶ人へ無理が集中しては続けられません。
ごみを減らすことは、自然を守るだけでなく、運ぶ人の負担を減らすことにもつながります。
また、山から下ろしたごみが適切に処理されるかも大切です。登山道から見えなくなることと、ごみ問題が解決することは同じではありません。
【二つの山で読み解く】改善を続けるための工夫
| 必要な工夫 | 具体的には |
|---|---|
| 持ち込む量を減らす | 出発前に余分な包装を外す |
| 持ち帰る役割を明確にする | 個人やツアーで、ごみの扱いを確認する |
| 無理なく運べるようにする | 袋の用意や荷物の量に気を配る |
| 改善を確かめる | 調査や計量を続け、残る課題を見つける |
山にごみ箱を置いても、そこに集まったごみを誰かが下ろす必要があります。
富士山とキリマンジャロの比較から見えてくるのは、持ち帰る人と、それを支える仕組みの大切さです。



登山前に余分な包装を外す!
その小さな準備も、山から運び下ろす荷物を確実に減らすのです。


- UNESCO World Heritage Centre「Fujisan, sacred place and source of artistic inspiration」
- UNESCO World Heritage Centre「Kilimanjaro National Park」
- 公益財団法人日本交通公社『2025年度 来訪者管理モニタリング業務 実施報告書』2026年3月
- 環境省「富士山の保全に向けた取組」
- 富士登山オフィシャルサイト「登山前に必ず知っておくこと」
- Kaseva, M. E. & Moirana, J. L.「Problems of solid waste management on Mount Kilimanjaro: a challenge to tourism」Waste Management & Research, 2010, 28(8), 695–704.
- バーゼル条約事務局「Plastic waste in remote and mountainous areas」
- Zara Tanzania Adventures「Mount Kilimanjaro Clean-Up: Zara Tanzania Adventures Leads the Way」2025年11月17日
- Daily News「Over 600kg of waste removed from Mt Kilimanjaro」2025年11月24日
- Wakibara, J. V., Ndesari, P. M. & Mafuru, J.「Tourism-Related Impacts on Mount Kilimanjaro, Tanzania: Implications for Tourism Management on Mountain Ecosystems」2009年
- 認定NPO法人富士山クラブ「清掃活動報告」2012年11月4日









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